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自然災害は予測不能で、時に突然私たちの前に現れます。
先祖たちは無数の災害を経験し、後世に向けてその教訓を伝え、被害を最小限に抑える知恵を言い伝えやことわざとして残しました。
ここでは、特定の地方で受け継がれてきた教訓について紹介します。
災害に対処する伝承と警句
「津波てんでんこ」について
【地域】三陸地方(宮城県、岩手県、青森県)
【読み方】「つなみてんでんこ」
【意味】地震の際には、家族を気にせず、個々に迅速に避難することの重要性を説く言葉です。
三陸地方に伝わる津波からの避難法で、地元の教えとして伝承されています。
三陸地方は、東北地方の太平洋沿岸部に位置し、宮城県、岩手県、青森県の3県にわたります。
「てんでん」とは「個々に」という意味で、地方の方言による「こ」という語尾を付けて「てんでんこ」と言います。
この言葉は、助け合いを試みることで双方が危険に晒されるのを避け、以下の4つの教訓を持つとされます。
①個人の生命は自己責任で守る 津波から生き延びるためには、他人のことは考えずに素早く避難することが肝要です。
②共同の警鐘 迅速に行動する者は、他者にも避難を促す影響を与え、逃げ遅れることのないよう刺激を与えます。
③信頼の確立 家族間で避難計画を事前に話し合い、津波発生時は「てんでんこ」を実行すると約束し、信頼を深めます。これにより、災害時には各自が安全を確保する行動を取り、互いに安心できます。
④生存者の罪悪感軽減 家族との約束通りに行動したものの、万が一家族が犠牲になった場合、自責の念に駆られることがあるかもしれません。しかし、教訓に従い行動することで、そうした感情を和らげることができます。
地元伝承に基づく建築の禁忌
【地域】岩手県宮古市
【読み方】ここよりしたにいえをたてるな
【意味】この地域では、古くから「ここよりも低い土地には住宅を建てるべからず」という言い伝えがあります。
岩手県宮古市の姉吉集落では、過去の大津波が大きな犠牲をもたらした経験から、先人たちは「大津浪記念碑」を設置しました。碑文には以下のように刻まれています:
「高き住居は児孫の和楽、想へ惨禍の大津波、此処より下に家を建てるな」
(高い場所に家を建てることは、子孫に安全と幸福をもたらす。過去の大津波の悲劇を忘れるな。ここより下の土地には家を建ててはいけない)
この教えが守られた結果、2011年の東日本大震災時には、集落内での建物被害は一切報告されていませんでした。
三陸沿岸地域には300以上の津波警告の石碑があり、それらには地震や津波に関するさまざまな警告が記されています。これには「大地震の後は津波が続くため迅速に避難せよ」や「津波の兆候を感じたら、すぐに高地へ逃げろ」といった具体的な指示が含まれています。
南東風が激しい場合の警告
【地域】神奈川県小田原地方
【読み方】みなみごちはげしければしけ
【意味】小田原地方では、南東からの風が強まると大気の不安定を示し、台風の接近を予感させます。この現象は、海の荒れ模様を「時化」と呼び、大荒れの海況を意味します。
虹の根が見えると地震の前兆
【地域】四国地方
【読み方】かぶにじはじしんのしるし
【意味】四国地方の伝承によると、地上近くだけが見える虹、いわゆる「株虹」が現れた場合、それは地震の前触れとされています。この現象は自然界の異常を示すサインと捉えられます。
非常時に鳴く雉と鶏の警告
【地域】愛媛県
【読み方】きじ、にわとりがふじに鳴くと地震がある
【意味】通常の鳴き時間と異なる時に鳴く雉や鶏が、地震の予兆であるという信念が愛媛県にはあります。通常、朝に鳴くこれらの鳥が異なる時間に鳴く場合、地震が近いと解釈されます。
【追加情報】日本全国の伝承においても同様の観察がなされています。例えば、岩手県や福島県では「雉が特定の様式で鳴くと地震が起こる」とされ、長野県や宮崎県でも雉の鳴き声が地震の前触れと考えられています。
蟻が卵を移動させる時の天気予兆
【地域】福井県
【読み方】ありがたまごをはこぶとおおあめ
【意味】福井県において、蟻が卵を別の場所へ移動する行動は、間もなく大雨が降る兆しとされています。通常、蟻は雨を避けるために巣口を閉じますが、特に大雨が予想される場合は、卵を安全な場所へ運ぶことで知られています。
【追加情報】日本各地で蟻の行動と天気の関連を示す伝承が存在します。群馬県では「蟻が巣上に土塚を築くと大雨の兆候」、愛媛県では「蟻が一斉に山に向かって進むのは洪水の前触れ」、埼玉県や宮崎県では「蟻が木に上るのは大洪水の予告」といった言い伝えがあります。
古道は災害を免れる場所
【地域】福島県
【読み方】こだいからつかっているみちはしんすいしない
【意味】福島県での伝承によると、長い歴史を持ち続けて使用されている道は、過去に何度も自然災害を乗り越えてきたため、洪水に強いとされています。これらの古道は、安全なルートとして知られ、災害時の避難道としても利用されています。
デイゴの花が豊かに咲く年の台風警告
【地域】沖縄県
【読み方】でいごがれいねんよりおおくさきみだれるとつよいたいふうがくる
【意味】沖縄県に自生するデイゴの木は、4月から5月にかけて鮮やかな赤色の花を咲かせます。この木が普段よりも豊かに花をつける年には、強い台風が訪れるという地元の言い伝えがあります。この観察は科学的証明はされていませんが、長年の経験に基づくものです。
山から降りてくる生物と火山活動の関係
【地域】山梨県
【読み方】やまのせいぶつがさとにおりたら、かざんばくはつのぜんちょう
【意味】山梨県では、山から野生動物が集落に降りてくる現象が観察された場合、これを火山活動の予兆と見なす言い伝えがあります。動物たちは地下の微動や温度の変化を敏感に感じ取り、その反応が人々に警告のサインとされています。
柿の豊作と強風の年
【地域】長崎県
【読み方】かきどしはおおかぜ
【意味】長崎県の伝承では、柿が豊富に実る年は、それが強風や台風の多い年であるとされます。この言い伝えも科学的な裏付けはありませんが、過去の経験に基づいて地元の人々に受け継がれています。
二月と八月の風注意
【地域】香川県
【読み方】にっぱちとんぼかぜ
【意味】香川県における古い言い伝えによると、二月の季節風と八月の台風が特に強いため、これらの月には船の旅を控えるべきだとされています。これは、突発的な強風や海上の危険を避けるための知恵として伝えられています。
冬の北風が吹くときの農家の対策
【地域】山口県
【読み方】ほうべんおろしにわらをしけ
【意味】山口県に位置する東鳳翩山と西鳳翩山は、一緒に鳳翩山と呼ばれており、この山から吹き下ろす冷たい北風は冬の訪れと霜の降りる兆しを告げます。この風が吹き始めたら、霜から作物を守るために藁を敷くなどの防霜対策を行うことが推奨される地元の言い伝えです。
まとめ
日本各地に残るこれらの言い伝えは、先人たちの実体験に基づいており、後世の人々が自然災害の被害を避けるための教訓として受け継がれています。これらの知識を記憶しておくことで、緊急時に冷静に行動できるようになるかもしれません。