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四国八十八ヶ所巡礼、通称「お遍路」とは、四国の88箇所の寺院を巡り、それによって願いが叶うとされる行です。この巡礼の背景にある意義や目的、及び期待される効果について掘り下げてみます。
また、巡礼を行う際に注意すべき事項についても解説します。
四国八十八ヶ所巡礼の意義
四国八十八ヶ所巡礼は、四国に散在する88の寺を訪れることです。この巡礼は「四国巡礼」とも呼ばれ、参加する人々は「お遍路さん」と呼ばれています。
これらの寺院は、真言宗の開祖であり、後の弘法大師として知られる空海に縁の深い場所です。空海は四国で修行を行い、多くの霊場を開設しました。この巡礼の起源は、修行僧が人々の災難を祓うために聖地を巡り、歩いて修行したことにあります。
遍路の語源について
「遍路」という言葉は、「辺地」すなわち辺鄙な地域を意味する古語から来ています。四国は昔、非常にアクセスが困難な地域でした。
鎌倉時代には「辺路」と呼ばれるようになり、これは遠い道を旅することを意味していました。江戸時代になると、「辺路」は「遍路」という言葉に変わり、「すべての地を巡る」という意味を持つようになりました。これは仏教の「すべてのものに平等に」という教えを体現しています。
四国八十八ヶ所を巡ることは、単なる旅行ではなく、霊的な平等が約束された道を歩むことを意味します。この深い意義を理解し、心を込めて巡礼することが求められます。
四国八十八ヶ所巡りの由来と目的
霊仙寺は、四国八十八ヶ所巡りのスタート地点とされる第一番札所です。
四国に八十八ヶ所のお寺が存在する理由にはいくつかの説があります。
- 煩悩の数が88であるため。
- 数字「八」は拡がりや発展を意味し、縁起が良いとされているため。
- 「米」という字を分解すると「八十八」となり、これが五穀豊穣を願う象徴とされるため。
- 厄年である男性42歳、女性33歳、子供13歳を合計すると88となるため。
- 初期の設定段階で選ばれた寺院がたまたま88ヶ所であったため。
空海が巡礼路を開いた当初は、88ヶ所という数は固定されておらず、彼に縁のある寺院は88を超えています。現在の88ヶ所として確定した背景や基準は、詳しくは明らかになっていません。
お遍路の目的とは?どんな利益があるの?
お遍路は元々、修行のために行われてきました。四国八十八ヶ所を巡ることにより煩悩を消し去り、願いが叶うと言われています。交通の発達により観光の側面も増え、お遍路の目的は多様化しています。
現代においてお遍路を行う理由は多岐にわたります。
- 先祖を供養するため。
- 厄除けを目的として。
- 過去の過ちを反省し、教訓を得るため。
- 自身の人生を振り返り、見直すため。
- 自己探求の旅として。
- 定年退職後の新たな生きがいを見つけるため。
- 健康を維持するため。
- ストレス解消を図るため。
- 現実逃避の一環として。
- 単純に観光として楽しむため。
これらは、現代におけるお遍路の多様な目的や期待される効果です。
四国お遍路で避けるべき行為
四国のお遍路では、従うべきいくつかの重要な禁止事項があります。
橋を渡るときの注意点
お遍路中には数多くの橋を渡る機会がありますが、金剛杖を地面につける行為は避けるべきです。この習慣は、弘法大師が十夜ヶ橋で過ごされたとされる伝承に基づいています。十夜ヶ橋は永徳寺の前にあり、「野宿の聖地」ともされています。弘法大師が橋の下で休息されるかもしれないと考えられているため、橋の上では特に金剛杖を使用しないよう心がけましょう。
金剛杖の適切な取り扱い方
金剛杖は弘法大師の象徴とされ、杖の上部には卒塔婆を模したデザインが施されており、通常は布で覆われています。この布で覆われた部分は尊重して直接手で触れないようにし、下部を持って使用します。また、宿に到着した際は、まず金剛杖の地面に触れる部分を洗って清めることが推奨されています。
トイレでの禁止事項
トイレは不浄とされる場所であるため、金剛杖や菅笠、輪袈裟、頭陀袋などの神聖な物を持ち込むことは避けるべきです。多くの寺院のトイレエリアには、これらのアイテムを置くための荷物台や棚が用意されています。また、食事の際には菅笠や輪袈裟を脱ぐのが一般的です。
お接待の精神と納め札の役割
お接待とは、四国のお遍路道における地元住民からの温かなもてなしです。この地域特有の文化において、人々は何も求めず、お遍路さんに対して食事や飲み物を提供し、休憩や宿泊施設も無償で用意します。
これを受けたお遍路さんは、感謝の意を示すために納め札を渡します。納め札は参拝の証として用いられ、そのために願い事を記すことは適さないとされています。
お接待の受け入れ
お接待は無償で行われ、提供者には功徳を積む機会とされています。それゆえに、お遍路さんはお接待を辞退することなく受け入れるのが一般的な礼儀とされています。
十善戒を生活に取り入れる
十善戒は仏教における日常生活で守るべき教えであり、お遍路中もこれを遵守することが求められます。これに違反することは避けるべきで、具体的には以下の戒律が含まれます:
- 不殺生:生き物を無闇に傷つけたり殺さない。
- 不偸盗:与えられていないものを盗まない。
- 不邪淫:不適切な男女関係を結ばない。
- 不妄語:嘘をつかない。
- 不綺語:意味のない話をしない。
- 不悪口:乱暴な言葉を使わない。
- 不両舌:人と人との間に争いを起こさせる言動を避ける。
- 不慳貪:貪欲にならない。
- 不瞋恚:激しい怒りを抱かない。
- 不邪見:誤った見解を持たない。
これらの戒律を守ることで、お遍路としての心得を体現します。
四国八十八ヶ所巡礼の方法
四国八十八ヶ所巡礼では、各寺院が「札所」として番号で示されています。巡礼者は通常、一番札所から始めて順番に寺院を訪れる「順打ち」を行いますが、これには特に固定の規則はありません。
逆の方法として、八十八番札所から始めて逆順に巡る「逆打ち」もよく行われます。この風習は愛媛県の豪商であった衛門三郎の伝説に基づいています。彼はかつて托鉢に来た僧侶を無礼に扱い、その後続く不幸に見舞われたことから、赦しを求めて四国八十八ヶ所を逆順に巡り始めました。初めの20回で会えなかった弘法大師に21回目の逆打ちでようやく会い、許しを得ました。
この逆打ちは閏年に行われたため、「閏年に逆打ちをすれば特別なご利益がある」と言われており、一般的な順打ちの3倍の功徳があるとされています。閏年でない時の逆打ちも多くのご利益があると言われますが、閏年時のような多大なご利益は期待できません。
その他の巡礼方法として、「通し打ち」では八十八ヶ所を一度に巡ります。「区切り打ち」では区切りをつけて巡礼を行います。また、「一国参り」は一つの県内の札所だけを巡る方法です。
四国お遍路の様々な旅の方法とその距離
四国お遍路を巡る方法は多岐にわたります。
- 徒歩での「歩き遍路」では、伝統的な巡礼路を歩いて進みます。
- 観光バスを使用した「バス遍路」では、グループで巡ることができます。
- 自家用車で行う「車遍路」は、個人または小グループでの旅が可能です。
- さらに、バイクや自転車で巡る人々もいます。
移動手段によって、巡る距離も異なります。徒歩の場合、1200キロメートル程度の伝統的な遍路道を辿ります。車やバスを利用した場合は、通常のルートから外れることが多く、約1400キロメートルの旅となることが一般的です。
どの移動手段を選ぶかは、個々のライフスタイルや体力に合わせて選び、快適なお遍路の経験を楽しむことが推奨されます。
四国八十八ヶ所巡礼の所要時間
四国八十八ヶ所を巡る際の所要時間は、利用する交通手段により大きく異なります。徒歩での巡礼の場合、通常約50日が目安ですが、自動車を使う場合は約10日で巡ることが可能です。
巡礼全体の期間は、距離が長いため、どんな手段を選んでも数日間はかかります。自分の体調や普段の生活リズムに合わせて、無理のないスケジュールを組むことが肝心です。もし一度の旅行で全部の札所を回るのが難しい場合は、いくつかの段階に分けて計画するのも良いでしょう。たとえば、「今回はこの範囲だけ巡る」や「3日間でできるだけ多くの寺院を訪問する」といった方法です。
また、利用できる宿泊施設が限定されているため、計画を立てる際には一日に歩く距離と宿泊可能な場所を慎重に選ぶ必要があります。このバランスを考慮することが、スムーズな巡礼を実現する鍵となります。
四国お遍路の経費詳細
四国お遍路をする際の主な支出は、宿泊費、食事代、そして納経所での支払いが中心となります。
納経所とは、巡礼者が訪問する札所で御朱印を受ける場所です。
徒歩でのお遍路は約50日、自動車を利用した場合は約10日が目安です。1日あたりの宿泊と食費を8,000円と見積もった場合、徒歩でのお遍路は総額約392,000円(49泊)、自動車の場合は約72,000円(9泊)が必要となります。
自動車を利用する場合、さらにガソリン代や駐車料金が加算されます。駐車料金は札所により200円から500円で、無料の場合もあります。
各納経所での御朱印代は一箇所につき500円で、全八十八箇所を巡ると総額44,000円がかかります。納経所は通常、午前7時から午後5時までの受付です。
特定の札所では、移動手段としてロープウェイやケーブルカーを利用することができます。利用料金は以下の通りです:
- 二十一番札所「太龍寺」ではロープウェイが往復2,600円。
- 六十六番札所「雲辺寺」ではロープウェイが往復2,200円。
- 八十五番札所「八栗寺」ではケーブルカーが往復1,000円。
さらに、四国にはお遍路さんが無料で利用できる宿泊施設が多数点在しており、これらの施設を活用することで宿泊費を節約することが可能です。これらの施設はすべてお遍路さん専用で提供されています。
通夜堂(つやどう)
通夜堂はお寺の境内に設けられた堂で、本来は夜通しで仏事を行う場として使われています。
大師堂(だいしどう)
四国八十八ヶ所巡礼路には、お寺の境内にある大師堂とは別に、路上に点在する大師堂があります。
善根宿(ぜんこんやど)
善根宿は、過去に修行僧や巡礼者、経済的に困窮している旅人たちを無料で宿泊させて支援していた施設です。
遍路小屋(へんろごや)
遍路小屋、または「ヘンロ小屋」とも称され、巡礼者が休憩したり、トイレを利用したり、時には宿泊することも可能な施設です。
バス停や公園、道の駅などでは、野宿が許可されている場所もあります。これらの施設は地元の住民やお寺の善意によって支えられており、巡礼者への接待として提供されています。施設によって寝具やシャワー、キッチン、洗濯機の有無が異なるため、利用する前には必ず案内表示を確認したり、地元の人に声を掛けて情報を得るようにしましょう。
一部の地域では、巡礼者のマナーが原因で野宿が禁止されていることもあります。以下のような基本的なマナーを守り、地元の善意に感謝する心を忘れずに行動しましょう。
- ゴミを放置しない
- 場所を汚さない
- 大声で騒がない
- 酒を飲んで騒がない
- 他の巡礼者とのトラブルを避ける
- トイレがない場所で不適切な行動を慎む
- 野宿禁止の場所で野宿をしない
巡礼の最適な時期は春と秋で、特にこれらの季節は混雑が予想されるため、計画は慎重に、余裕を持って立てることが勧められます。お遍路はもともと修行のために始まりましたが、現在ではさまざまな目的で参加する人がおり、国内外からの巡礼者も増えています。この貴重な日本の文化を次世代にも伝え続けていくことが重要です。